読書メモ フィードバック入門 中原淳
フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 (PHPビジネス新書)
- 作者: 中原淳
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2017/02/18
- メディア: Kindle版
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要点まとめ
マネジメントとは
- 「Getting things done」+ 「through others」
「他者を通じて」「物事を成し遂げる」をマネジメントの定義とすると、自分もこれまで見てきたマネージャーの多くもマネジメントの割合はそんなに高くない人が多い。私もどうしてもプレイヤーとして動きたくなってしまって、手を動かしたりコードを書いたりしたくなってしまう。「他者を通じて」という覚悟が必要だ。
フィードバックとは
情報通知→立て直し で構成される。
情報通知
- ティーチング(一方向的な情報伝達)
立て直し
- コーチング・振り返り
部下育成の基礎理論
経験軸
この本でもっとも印象的だったのはこの図だ。これまでのキャリアで、「コンフォートゾーン」だと感じたらそこから抜け出そう、というふうにキャリアを選んできたつもりだが、ストレッチゾーンの外側に更にパニックゾーンがある、というのは目からウロコで、経験的にそういう状況を何度も目にしてきたが明確に言語化されたのは始めてだった。
会社の人材育成でも、コンフォートゾーン→ストレッチゾーンしか認識しておらず、ストレッチゾーンに入れたつもりがパニックゾーンになっていて潰されてしまう、というケースが何回もあったように思う。部下やチームメンバーがパニックゾーンに入ってしまっていないか、というのは今後意識するようにしたい。
レジリエンス理論でも「一回死んだら強くなる」的な論調を見かけるがそれは生存者バイアスなだけであって、パニックゾーンに入ってそこで生き残った人たちが強くなっているだけであってそれは単純な根性論と変わらない。適切なストレッチ目標を与えて効率的に人を壊すことなく育てられるようにしたい。
ピープル軸
業務支援
- OJT、教える、助言すること
内省支援
- 振り返りの促し
- 客観的意見を伝え気づかせる
精神支援
- 励まし、褒める
- 感情のケアをする
の3つが人を育てるために必要だとすると、私は精神支援と業務支援はできていたが、内省支援、が弱かったな、と思う。
職場のタイプ
経験軸・ピープル軸の4象限で、「挑戦させすぎ職場」と「非成長職場」でこれまで働いていたように感じる。 「挑戦させすぎ職場」は、「成長職場」であろうとして無茶なパニックゾーン的な業務を与えている印象が強い。「非成長職場」は平和で居心地も良かったが、定年まで非成長でいることに耐えられそうになくて飛び出したのだが、「挑戦させすぎ職場」に行ってしまいしんどい人生を送っている。
SBI
フィードバックに必要なものは、
- S シチュエーション
- B ビヘイビア
- I インパクト
で、部下やチームメンバーのSBIを常にメモしておくと良い。 これまでもクォーター毎のフィードバックのためにメモをするようにしていたが、フレームワークとして記録していなかったのでこのフレームワークで記録するようにする。
振り返りのプロセス
- What? 何が起きたのか
- So What? それはなぜなのか?
- Now What? これからどうするのか?
ソフトウェア開発の現場だとKPT、でやることが多いが、それぞれWhat?, So What?, Now What?に対応するんだろう。 今後は再発予防 Relapse PreventionがTryで行われるか、を注意しよう。
フィードバックのタイミング
「即時」のほうが良い時がある、というのは応用行動分析とも共通するところか。 即時+確実が効果がある。
言い訳ばかりしてくる「とは言いますけどね」タイプ
こういうフィードバックすると言ったことに対して返ってくる物量が10倍ぐらいになるタイプへのフィードバックが億劫というか苦手だ。何を言っても「自分は悪くない」立ち位置から始まるので正当化するための言葉がずっと続く。
フィードバック≒プルリクエストのレビューコメント、でも似たようなタイプの人はいる。コードに対する精確さ、完成度への自信があるため、何をコメントしても絶対にコードを変えようとしないタイプ。
考えたこと
ここ数年、チームのあり方やマネジメントについて悩むことが多く、かと言って徒手空拳で自己流でやっていくのも非効率な感じがしていて中原淳先生の本は好んで読んでいる。
IT関係の現場でも、PM的な資格はあるもののどうやって人材開発をしていくか、採用をやっていくのか、というのは個々の現場でなんとなくやっていて、理論にもとづいていたり研究結果を反映しようとしていたりはしないように感じる。
フィードバックについても、形式的なフィードバック制度があったり、360°評価があったりもするが、フィードバックをする方もされる方もどうしたら良いかわからず、とりあえずいいところはフィードバックするが修正した方がいい点、耳の痛いところに関してはお茶を濁してやり過ごす、ということが多いのではないか。
実際に書いてあるフィードバックを実践しようとすると多大な精神力を消耗しそうで、プレイングなマネージャーだと負荷が高すぎる印象を受けた。マネージャーに専念できるならそういう時間も精神的な余力も残せそうだが、ここまで踏み込んだフィードバックをし、メンバーを成長させるために会社として投資するんだ、という覚悟が必要なのだと思う。
フィードバックが機能していて、意識的に設計ができている職場を作り、選ぶようにしていこう。