食べログ(tabelog)に酷い店をありのままに書くと消されるのを知ってますか?

この話をすると驚かれることが多いのですが、tabelogに酷い店に遭遇して、帰ってきてありのままを正直に素直に書くとその口コミは削除されます(正確には下書きに戻される)。

つまり、tabelogに悪い情報は基本的に載っていません。
これはtabelogに限らず、イヤな経験をそのまま素直にブログや口コミサイトに投稿するとブログ運営者から警告メールが来たりします。


最近はもう正直な情報をtabelogに書いても正確な情報を他の人たちや経営者に伝えるという目的が果たせなそうなので、はてなに書くことにしています。

はてなは正直に書いてもいきなり削除はされたりませんし、削除要請が来るときも実際のレストランや美容室の経営者からなので、情報を経営者やスタッフへフィードバックするという目的を果たすことができるし、検索でも上位に来るので口コミを探している人にも届きます(たぶん)。tabelogは最悪の場合検閲スタッフだけが見て削除、というのがあり得るので目的を果たせない可能性が高いです。



この文章で言いたいこと

悪い情報フィルタしちゃったら口コミサイトの意味なくない?

本音の情報を集めたら悪い店が明らかになった

そもそも口コミ系サイトを見るユーザは、「本音」の情報を探しているはずなのに、それを運営者自らが検閲の上削除して回るのは本末転倒ではないでしょうか。

最初は信頼できる情報を集めようとして始めた(であろう)はずが、そうやって運営者側がユーザが本音を書くことを禁止して回って、良いことばかりしか書かれなくなった口コミ系サイトが信用を失うというのは皮肉ですね。


もっとも、レストランに行って満足した人よりも、酷い目にあった人の方が誰かに文句を言いたい、という衝動があるというバイアスはあると思うので、致し方ないのかもしれません。満足した人は口コミ系サイトに不満を書くインセンティブがありませんよね。

素直に、正直に書くと消されたり訴えられたりする

本音を書くことを禁止された口コミ系サイトは、口コミを投稿するユーザによっても、口コミを探すユーザにとっても、レストラン経営者にとっても、tabelogにとってもみんなが損をする仕組みなのではないでしょうか。

本音をみんなに教えてあげたいのに検閲の上削除されるし、本音を探しているつもりのはずがtabelogに良いことが書いてあったからといって実際レストランに行ったら酷かったとか、せっかく顧客からフィードバックがもらえて改善できるチャンスだったはずがレストラン経営者に届く前に検閲の上削除されるとか、良いことが浮かびません。


以前も美容室に行って酷い目にあったのでそれを素直に書いたら、「法的手段も考えます」なんてメールが来たことがあって、お客さんであった人にそんなものを事実の確認もろくにせずに送りつける美容室とか、そもそも客商売に向いていないのではないか、というお店もあります。

そのときは、「法的手段でOK」と思っていたのですが、その後法的手段は取られることはありませんでした。「法的手段」なんて言われたらびっくりして記事を取り下げることも多いでしょう。

そういうのをわかっていてお客さんであったであろう人にプレッシャーをかけるためにそういうメールを送るのだから卑劣です。

努力すべきはそこではなくて、そういう事をお客さんに書かれてしまう経営体制だったりスタッフの教育だったりすると思うのですが、そういう方向にフィードバックを活かそうとするお店は少ないようです。たしかに、どちらが楽かと言えばそれは前者でしょうけれど。

本音と建て前の日本的罵倒芸の発達

本音を書く場がどんどん少なくなっていく一方で、本音を書きたいユーザは日本語の婉曲的表現を駆使した罵倒芸を発達させつつあるのではないでしょうか。

素直に酷い目にあったことを酷い目にあったと書くことができない以上、一見して検閲には引っかからないけれどその文章の裏を読む必要がある表現を駆使せざるを得ません。


実際、☆が1つだけどぱっと見悪いことが書いていないな、という口コミはそういう読み方をすると見えてくる物があると思います。


ちなみに、tabelogの利用規約にはいくつか禁止事項がきちんと*1明記されていますが、その中にワイルドカード「内容の確認が困難と思われるもの」と「その他、「食べログ」のサービスを妨げる等、当社が不適当と判断したもの」が入っているため、そのほかの項目はあまり意味は無いと思います。


この「内容の確認が困難と思われるもの」の主語はtabelogなので、「店員の態度が悪い」とか、「料理がしょっぱい」とか、「店が臭い」とか「雰囲気が悪い」とかそういったものは全て削除される可能性があります、というか可能性じゃなくてまず削除されます。


そこで、tabelogの検閲に引っかかるのを回避するためには、酷い目にあったことを正直に書くわけには行かないので、下記のような書換えをせざるを得ません。


こういった日本の婉曲的伝統罵倒芸が発達しても誰も得しないと思うのですが、多くの人に情報を届けたいという目的の達成のためには仕方ありません。不本意ですが、こういった表現の仕方をノウハウとして集めておく必要があります。

ただ、問題は口コミ投稿者がこの婉曲的伝統罵倒芸を駆使しても、それが口コミを探すユーザに伝わらない懸念があることで、これは双方合意の元で使わないとコミュニケーションに齟齬が発生してしまいます。

今でも、☆が一つしかついていないにも関わらず悪いことがぱっと見書いてないな、というのは要注意口コミだという共通認識はあると思うので、伝統罵倒芸を使っても☆一つだったら要注意、という認識が広まってくれば大丈夫かもしれません。

  • 店内がトイレ臭い→NH3系のふんわりとした香りが店内に漂っています。
  • スタッフの皿や食器の置き方が乱暴→スタッフの皿や食器の置き方がかなりダイナミックです。
  • スタッフはまともな店に行ったことがないのではないか?→是非、スタッフの方達には○○○へ行ってみることをオススメします。
  • 店員の態度が悪い→スタッフのきめ細かい気持ちの良いサービスに感銘を受けたというと誉めすぎどころか心にもないことを書いたと自責の念に駆られ夜も眠れなくなりそうなぐらいです。
  • つまみが時価なのでうっかり頼むとぼったくられる→お財布に余裕を持っていくか、あらかじめ予算を伝えておくと会計のときにPricelessになることはありませんが、予算を伝えるとなぜか予算ぴったりの会計になるので正直に伝えましょう。

悪いことが目に見えない世界は良い世界なのか?

口コミサイトの中でも、楽天トラベルの、口コミのページは良いのではないかな、と思っています。
あそこは口コミの情報自体が商売ではないのでできることなのかもしれません。または、悪い情報はちゃんと公開して運営者にもフィードバックするという崇高な目的があるのかも。


楽天トラベルは、ユーザのコメントに対して、運営者がレスを書くことができるので、酷い目にあった、と正直に書いてもいきなり削除はされないし、不満はちゃんと運営者に伝わるし、改善したこともわかります。
tabelogみたいに検閲スタッフだけが見て削除しちゃったらもったいないと思います。

口コミサイトが口コミだけで食っていこうとすると、正直な情報を載せるわけにいかなくなってくると言うジレンマがあるのかもしれません。


危険なものが見えないようにすることは、かえってリスクを高くするのでは? うごメモから見える世界はフィルタされている - Money does not hurt your heartでも同じようなことを書きましたが、悪いことが見えないのはかえってリスクを高くするのではないか、tabelogの場合であれば、悪い店が淘汰されず、いつまで経っても酷い目に遭う人がいなくならないのではないでしょうか。


先の美容室の例も同じですが、tabelogのような口コミサイトの社会的責任SRIとして、悪い情報も良い情報もちゃんと伝える努力をすべきで、悪い情報を検閲して削除する努力は明らかに間違った方向性だと感じます。


消費者が外食に使う支出が有限である以上、悪い店が淘汰されないことは、良い店の得るはずだった売り上げが良い店に回らないということで、悪い店が改善する機会も奪うし、消費者が良い店に巡り会うチャンスも減らすし、そんな仕組みを誰が望んでいるのでしょうか。


レストランの悪いクチコミを独占的に集められるのは、際立った優位性がある貴重な情報とtabelogも当然気づいているようで、最近はコンサル業務も力を入れ始めたみたいなので、期待しています。

レストランの顧客からの悪い情報を得て、それを改善するためのコンサルをする、それこそGreeのようなみんなが幸せになる仕組みですよね。

*1:[http://tabelog.com/help/rules/]